こんにちは。カズゥです。

久しぶりの更新になりました。しばらくブログを放置してしまって、読みに来てくださっていた方には申し訳ありません。

放置していた理由はシンプルで、AI小説の執筆にハマっていたからです。
「ちょっと試してみよう」くらいの気持ちで始めたのに、気づけば毎日、物語をいろいろ考えていました。

AIと一緒に書くと、頭の中のイメージが言葉になる感覚があって、書く手が止まらなくなりました。自分ひとりでは思いつかない言い回しや、展開の方向に出会えるのも面白いところです。

というわけで今回は、その中から1作品をこのページに全文掲載してみます。
もしよければ読んでください。

『夜に見た朝ドラ』

あの頃、僕の一日は夜から始まった。

母が仕事から帰ってくる。玄関で靴を脱ぐ音。流しで手を洗う音。それから、味噌汁を温め直す小さな火の音。

「浩、再生して」

僕はソファに座ったまま、再生ボタンを押す。朝ドラが流れ出す。これは、夜にしか見れない母のために僕が毎日録画を設定したものだ。

二十三歳にもなって社会との接点を失った僕は、ただボタンを押すためだけに、かろうじて生活のリズムを保っていた。

十五分間、黙ってテレビを見る。ヒロインが泣いたり笑ったりするのを、母は「あらあら」とか「まあまあ」とか言いながら見ている。

番組が終わる。

「停止して」

停止ボタンを押す。母は台所へ消える。それで終わりだった。

顔を合わせるのは、その十五分だけ。会話らしい会話もない。でも母は毎晩「再生して」と言い、僕は毎晩ボタンを押した。

文句を言ったことがある。

「自分で押せばいいだろ」

「できないのよ。浩、お願い」

僕は何も答えなかった。

朝ドラを見ていると、不思議なことに夜なのに朝の匂いがした。画面の向こうで誰かが窓を開け、誰かが走り出していく。その眩しさを、僕は毎晩十五分だけ浴びていた。

三年が経った。

ある夜、いつものように再生ボタンを押した後、僕はヒロインの顔をじっと見た。夢を追いかけて東京へ出る話だった。僕は東京どころか、この家からも出られないのに。
でも、見続けた。

五年目の春、僕はハローワークに行った。

なぜ行けたのか、自分でもわからない。母に何か言われたわけではない。

初めて面接に行く朝、玄関には僕の革靴が磨いて置いてあった。

帰宅後、母は面接について聞かず、いつもと同じ、朝ドラの再生、停止ボタンを僕に押させただけだった。

あれから、数十年が経った。

僕は結婚し、子供が生まれ、その子供にも子供が生まれた。浩弥という名前だ。

母は、孫の顔を見ることなく逝った。

遺品整理で古いリモコンが出てきた。再生ボタンと停止ボタンの文字だけが、擦り切れていた。

浩弥が学校に行かなくなったのは、中学二年の秋だった。

友人関係で何かあったらしい。息子夫婦は途方に暮れていた。共働きで、日中は二人とも家にいない。僕は何も言わなかった。言えることなんて、何もなかった。

ただ、僕は浩弥の部屋の前を時々訪ねた。声をかけても返事はなかった。それを繰り返した。

ある日、頼みごとをしてみた。

「じいちゃん、朝ドラ見たいんだけど、操作が分からないんだ」

しばらくすると、ドアが細く開いた。髪が伸びて、目の下に隈がある。

僕はリモコンを見せた。

「これ、どうやって再生するんだ」

浩弥は僕の手元を見て、小さくため息をついた。

「こんな簡単な操作もできないの? 再生アイコン押して、終わったら停止アイコン押すだけだよ」

僕は何も言わなかった。ただ、首を傾げてみせた。

「じいちゃん、わかんないから、操作してくれよ」

浩弥の目が少しだけ見開かれた。それから、諦めたようにソファへ歩いてきた。リモコンを受け取り、ボタンを押す。画面にヒロインが映し出された。

「終わったら呼んで」

浩弥が立ち去ろうとする。

「待ってくれ。停止アイコン、わからないんだ。最後まで見届けてくれ」

浩弥は何か言いかけて、やめた。そのまま、ソファの端に腰を下ろした。

十五分間、僕らは黙ってテレビを見た。

ヒロインが笑って、泣いて、また笑う。浩弥は最初、画面を見ていなかった。スマホをいじっていた。でも途中から、少しだけ顔が上がった。

浩弥がトイレに立った。僕は画面を一時停止して待っていた。

戻ってきた浩弥が、画面を見て眉を上げる。

「じいちゃん、止められるじゃん」

「たまたまどこか触ったら、止まった」

浩弥は何か言いたそうにしたが、黙ってソファに座り直した。

番組が終わった。

「停止」

浩弥が停止アイコンを押す。立ち上がりかけて、ふと動きを止めた。

「……明日も見るの」

「ああ」

浩弥が部屋へ戻ったあと、僕はテーブルの上のリモコンを手に取った。味噌汁の匂いが、ふっと蘇った気がした。決定ボタンを指でなぞり、しばらくテレビの黒い画面を見ている。

浩弥。人生いろいろあるよ。

でも、まあ、しょうがないよ。

朝ドラを一緒に見よう。

十五分でいい。

朝ドラがある限り、何年でも見よう。

決定ボタンの文字が擦り切れるまで。

一話一話、ゆっくり行こう。

 

あとがき

このブログも、無理のないペースで書いていきます。今後ともよろしくお願いします。

良かったら、他の小説も読んでみてください。

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