こんにちは。カズゥです。
今回の読書感想文は、トッド・ローズ、オギ・オーガス著『Dark Horse 「好きなことだけで生きる人」が成功する時代』です。
翻訳のせいなのか、もともとの用語が特殊なのか、すこしわかりにくいところがある本ですが、ニートは勇気づけられる本だと思います。
ダークホース的な成功法則
成功へのお決まりのルートではなく、どこからともなく現れ、そのずば抜けた才能を独自の流儀でその世界に認めさせる。
このように予想を覆して勝利する人々、今まで見向きもされなかったのに突然快進撃をはじめ勝者となる人々を表す言葉、それがダークホースです。
みなさんも、ダークホースという言葉を聞いたことがあると思います。ダークホースを日本風に言えば、穴馬でしょうか。
ダークホース的な成功というのは、本命視されていない、誰からも見向きもされない馬が、突然現れ、皆が気づいたころにはすでにゴールしているような勝利です。
アメリカというのは、こういう正規ルートから外れた人たちでも成功できる懐の大きい国だと個人的には思います。また、そういった人たちを応援するような本も多いんですよね。
以前、読んだ本にデイビッド・エプスタイン著『RANGE(レンジ) 知識の「幅」が最強の武器になる』があります。
この本をざっくり説明すると、タイガー・ウッズみたいな英才教育をロールモデルにするのは難しいよ、非効率的な学習、ムダな時間、まわり道が長期的には価値があるよ、それがRANGE、知識の幅、経験の幅、幅が大事だよという本でした。
さすが、多様性の国アメリカ、成功への道筋が凝り固まっている日本と違いますよね。
標準化時代から個別化の時代へ
この本では20世紀初頭に幕開けした、わたしたちが生きるこの時代、西洋社会が、工場生産を基盤にした製造業経済に移行した時代を「標準化時代」と呼んでいます。
標準化時代の成功の定義は「出世の階段を登ることによって、富と地位を獲得すること」
また、「自分の目的を知り、それに向かって懸命に取り組み、コースから外れるな」というメッセージは、これこそが豊かな人生を確保するための最も信頼できる方策なのだとわれわれは信じて疑わなくなった。
まあ、要するに為政者が管理しやすいように、今の時代はいろいろと標準化されているということです。
標準化された職場では、個性は問題にされその波は学校にも及びます。
最初にわれわれは「働き方」を標準化し、次に「学び方」を標準化した。その後、標準化された職場と教育システムを統合し、標準化された出世の道を確立した。こうして、幼稚園の門を初めてくぐる日から定年退職の朝まで、われわれが通過する道のりすべて、つまり人間の一生のすべてが標準化されてしまった。
自動車の工場のようにわれわれの人生も、オートメーション化されているということですね。標準化時代の人生は、ベルトコンベアで運ばれるパーツのように決まっているということです。
こういった、標準化社会はアジアにいたっては完全に硬直した形で浸透した、と書かれてあります。納得ですよね。
日本、中国、韓国といった東アジアでは成功へのレールがかなり強固にできていますよね。いったん、その成功へのレールから外れると、なかなか生きづらい人生になってしまうのは、この3か国共通ではないでしょうか。
しかし、その標準化時代の成功法則は賞味期限切れ。われわれの社会は、「個別化の時代」を迎えようとしている。
その個別化の時代の新しい成功法則が、「ダークホース・プロジェクト」です。
個性を生かして、充足感と成功を目指せ
ダークホースの成功者には共通点があります。それが「充足感の追求」です。
標準化時代は「成功を目指して努力を重ねれば、いずれ充足感(幸福感)を得る」という順番でした。勉強を頑張り、良い学校に入り、良い会社に入り、社会的な成功者になり、その結果、充足感(幸福感)を得る、ということですね。
しかし、これだけだと仕事で成功しながらも、不幸な人生を送っている人がいます。
そこで、ダークホース・プロジェクトで明らかになったのは、実は順番が逆だったということです。
「成功の追求が、充足感(幸福感)をもたらした」のではなく、「充足感(幸福感)の追求が、彼らを成功に導いた」のです。
つまり、成功→充足感(幸福感)の順番ではなく、充足感(幸福感)→成功の順番だったということです。
このコペルニクス的転回は、ショーン・エイカー著「幸福優位7つの法則 仕事も人生も充実させるハーバード式最新成功理論」にも似ています。
こちらの本でも、成功したことによって、その結果、幸福になるのではなく、まず、幸福になることによって、その結果、成功するという主張でした。
成功→幸福の順番ではなく、幸福→成功の順番ということですね。この2冊の本の主張が似ているのは、面白いですね。
では、その充足感(幸福感)を得るにはどうしたらいいでしょうか?
自分の小さなモチベーションを見つける
ダークホース的な最重要、第一の要素として、小さなモチベーションを見つけることを推奨しています。
小さなモチベーションとは、クロゼットの中を整理したい、物体を真っすぐに並べたい、などの些末に思えるが、きめ細かく特定された、自分自身のある意味偏った好みや興味のことです。
自分の小さなモチベーションを探し出したことによって、成功した人物の例がいろいろ載っています。
その中から、ソール・シャピロの例を上げます。
彼の小さなモチベーションは、手を使って作業すること・面白い装置や機会をいじること・数学的な計算をすること・ひとりで仕事をすること、そして物体を真っすぐに並べることでした。
彼はまず、技師としてその小さなモチベーションを活かしました。砂粒ほどの半導体チップを髪の毛ほどの細い繊維に寸分たがわず配列し、新しいインターフェースを開発して成功しました。
その後、彼はその会社の中間管理職となりますが、管理職は彼の小さなモチベーションと相性が悪く、結局見切りをつけることになります。
最終的には、ソファの修理職人になり、2015年には雑誌『ニューヨーク』から「市内で最高の本革製ソファ修理人」に選定されました。
彼を成功に導いたのは、物体を真っすぐに並べたいなどの小さなモチベーションを追求した結果でした。
わたしの小さなモチベーション
わたしも、自分自身の小さなモチベーションを考えてみました。ここは読み飛ばしてもかまいませんw
何かを直す
個人ゲーム開発をしていますが、バグの修正が好きというわけではないですが、けっこうしつこく取り組みますw
昔から、PCのトラブルとか解決するまで、ご飯も忘れてやっちゃうところがありました。こういうのは解決しないと、気が済まないところがありますw
ひとりで仕事をする
以前、働いていた職場で、課題をチームワークで片付けるより、ひとりで片付けちゃうのが好きでした。なんか、すごい快感なんですよねw 自分ひとりでやる達成感(自己中)
アイデアで喜ばせる
これも同じ職場での話なんですが、効率的な仕事のやり方を思いついては改善していました。同僚に「おかげで仕事が楽になったよ」とお礼を言ってもらうと、すごく嬉しかったですね。
仕事に限らず、わたしのアイデアで人が喜ぶのを見るのが好きです。
というわけで、やはり、わたしは個人ゲーム開発に向いてるかなと思います。無理矢理こじつけた気がしないでもないですがw
才能の定員制と才能の貴族主義
有名大学の入学志願者の才能を査定することなく、先に定員数を決めていることを、「才能の定員制」を強制していると批判しています。
また、才能には人それぞれ「バラツキ」があるため、1人の才能を他人が予測するのは難しいそうです。
豊富な語彙力があるからといって、文章を書くことが得意とは限らない。三角法が得意だからといって、微積分も得意とは限らない。名前を覚えるのが得意だからといって、メロディを覚えるのも得意とは限らない。
それぞれの才能に「バラツキ」があることによって、それぞれに適した戦略は異なる。まさに人それぞれの個性ですね。
才能に定員制があること自体が、能力のある多くの人々を確実に底辺に押し留めている。この才能の定員主義が、ごく少数の勝者と大多数の敗者を生む。
有名ブランド化した大学に入学できる学生の(アメリカ)人口比率は、イギリス・スペイン・イタリア・ロシアで貴族主義が最盛だった時代の貴族の(各国)人口比率より低いそうです。
なんと、現代アメリカの有名ブランド大学生の比率のほうが、昔の貴族主義時代の貴族の比率より低い! 現代アメリカのほうが階級制社会になってしまっている。
まさに、才能の貴族主義。だから、アメリカの格差が広がっているんでしょうね。
しかし、だからこそこのような本が出版されるのもまた、アメリカという国の懐の深いところですね。
仕方なくダークホースになる人のほうが多い
この本には、いろいろな分野でダークホース的な成功を収めた人がでてくるんですけど、ほとんどの人たちは、標準化時代での成功を夢見ていた人たちが多いんですよね。
最初から、「うぇーい、オレはダークホースだぜー」なんて人はいないのです。
いろいろな事情があり、運の悪さもあったりで仕方なくダークホース的な成功を目指した人たちのほうが多いわけです。
そもそも、著者の二人が標準化時代に脇道にそれた人たちでした。二人とも高校、大学をドロップアウトしています。自分たちを「標準化システム」においては落ちこぼれと評しています。また、多くのダークホースたちが学校では落ちこぼれだったり、中退しているそうです。
ここらへん、ニートに近いものがあります。誰も好き好んでニートになったわけではないですからね。
この現代日本で成功したくて、チャレンジして夢破れ燃え尽きて、ニートになった人のほうが多いと思うのです。
ダークホース的な成功を収めるには自己分析が必要だが
ダークホース的な成功を収めるには、小さなモチベーションを探し出すなど可能な限り徹底的に自己分析をする覚悟が必要だとありますが、うーん、どうなんでしょうねー。
個人的な意見なんですが、自己分析の前にとりあえず、興味のあるものは片っ端からいろいろやってみたほうがいいと思うんですよね。
何かしら、取り組んでみてから気づく自分の小さなモチベーションや個性があったりするんじゃないでしょうか。
自己分析から始まっちゃうと、自分探しの旅が始まっちゃうと思うんですよね。自分探しの旅ってなかなか終わらないですよねw まあ、人生自体が自分探しの旅のような気もしますが。
ニートでもダークホース的な成功を目指す
標準化時代から、個別化の時代への移行はすでに始まっています。階級制のある大企業に支配された産業経済から、個人でもインターネットを活用することによって、フリーランス的な活躍ができるようになった、情報とサービスの経済へと移行しています。
日本はデジタル化の遅れによって、この変化にも遅れそうです。いまだに、学歴、大企業、年功序列、終身雇用ですからね。しかも、若い子はスマホはいじれても、PCはわからない子が多いそうです。
上でも書きましたが、アメリカは多様性の国なので、いろいろな成功の形態を認めてくれる国です。
この本では、ダークホースの代表例としてはでてこないんですが、個人的にはスティーブ・ジョブズとか、けっこうダークホース的だと思うんですよね。今、振り返れば彼は成功者だと、みんな知っていますが、実はあまり王道を歩んだ人じゃないと思うんです。ビル・ゲイツの陰に隠れてそのまま、消えてしまう可能性もあったと思います。
その彼のダークホース精神は、1997年のAppleの広告キャンペーンのスローガン、「Think different」のCMのナレーションにも現れていると思います。
そのスティーブ・ジョブズの国、アメリカと比べると日本は、成功への道筋が硬直化して凝り固まっています。
自民党総裁は岸田さんに決まりましたが、政策を見ていると日本の将来は、まだまだ暗いなと感じましたw
国が変わりそうにないなら、自分を変えるしかないですよね。
この本を読んで、自分の小さなモチベーションを探し出し、充足感を感じてダークホース的な成功を目指しましょう。
Patou RicardによるPixabayからの画像